マコの勝手に思い入れ情報

著者の意向とは関係なく、本の主題とも大きく外れますが、勝手に面白いと思う情報を取り上げるコーナーです。



<<<   2007.04   >>>


☆★☆ 直売所は豊富な品揃えで楽しく ☆★☆ 

  今回は大浦裕二さん(中央農業総合研究センター)の『現代の青果物購買行動と産地マーケティング』です。
 国産農産物は、スーパー等で海外の安い輸入青果物と同じ土俵に立たされ、青果物産地はずーっと苦戦を強いられていますよね(ちなみに野菜の自給率は1970年99%、90年91%、2000年82%、04年80%:『平成16年食料需給表』より)。一方では価格より安全・安心を求める消費者もいますが、スーパー等で無農薬農産物が手軽に入手できるようになり、生協にはかつての勢いがありません。他方、新鮮さとふれあいを求めた産地直売所は売り上げを伸ばしています。しかしスーパー等が朝市の開催や地元産コーナーを設け始めており、産地としては予断を許しません。
 この本で大浦さんは、青果物産地が有利販売を行っていくためには、消費者の意識やニーズを把握し、産地マーケティングを確立することが決め手になると言っています。そこで消費者の意識を把握するために大浦さんがとった方法は、スーパー、生協、直売所といった販売チャネル別の消費者の青果物購買行動に注目して、その行動特性を定量的に把握すること。
 こう言うと難しそうに思えますが、そんなことは全くないよ。たとえば、小売店頭での表示(原産地表示、栽培方法等)によって、消費者は地元産の農産物、減農薬・減化学肥料栽培農産物にいくら高く払う用意があるかをみたり、安全性成分や機能性成分をどのくらい評価しているかを分析しているんだよ。また消費者は生協とスーパーを価格によって使い分け、そのため需給不均衡が起きているって本当か、とか、消費者はどんな直売所を求めているかを地域別・性別にみたり(駐車場や価格、地元産割合)、直売所でどんな商品や販売方法を望んでいるかをみているの。
 その結果を1つだけ教えますね。消費者は直売所にたいして、商品(鮮度、味、安全など)には満足しているんだけど、売り方には不満があるようなの。要望と現実のギャップのあるものは、「食べ方を表示してほしい」「見切り品や規格外の商品を安くしてほしい」「農薬の表示」「少量パックでの販売」「朝市・夕市を開いてほしい」「午後も品数を充実してほしい」といったもの。
このように、この本は青果物産地の販売力アップのための方法や処方箋を描いており、実際的で役立つ情報がいっぱいあります。
 ところで、わが家の近く(首都圏の郊外だよ)にも農産物直売所があるんだけど行ったことがないんだ。なぜならそこの開店は火曜と金曜の週2回で、時間も10時半から12時まで。そのほかの沿線の直売所も似たり寄ったり。これでは仕事をもった人は対象外です。土日や夜7時くらいまで開いていてほしいですね。
直売所が扱う商品は、地元の旬の農産物が中心となるんでしょうが、それだけでは厳しい競争に勝てないよね。スーパー等の参入もあり、都市近郊では直売所が次々できて過当競争に入っている地域もあるとか。新鮮・味・地元というコンセプトに加えて、商品の豊富な品揃えも必要だよね。品揃えを豊富にするには多様な担い手、多様な入荷チャネルが不可欠。地域の人とモノのネットワークの構築が必要というわけ。直売所向きなのは多品目少量生産。地域の個性や風土、地域の食を表現できる新品種、新商品、手作り加工品の開発も必要。
 海外の事例も参考になるはず。ヨーロッパやアメリカでもファーマーズマーケットは盛んで、楽しそうですね。食材をインターネットでみると、実にさまざま。 
 ハワイ:ダイヤモンドヘッドの麓で開催。メイド・イン・ハワイのものだけを扱う店のみ出店が許される。採れたての野菜、フルーツ、肉、花、コーヒーを始め、手作りのパンやケーキ、地元有名レストランのプレートランチ(大きな紙皿のテイクアウトの弁当)など。色鮮やかなフルーツやトロピカルフラワーは見て回るだけでも楽しいとか。
 アメリカ:各地で週に1、2回開店。新鮮な野菜やフルーツと魚や肉、パン、時には生きた鶏もあるとか。リンゴやブドウのジュース、ソーセージ、チーズ類、特製のポップコーンなど、農家手製の食品を購入できる。アーティストたちが作る美しい石鹸や焼き物、バスケットも売っていたり、ライブ演奏も楽しめるそうだ。
 シアトル(パイク・プレイス・マーケット):約90年の歴史をもつ。観光客は毎年約900万人で シアトルの観光スポット。50名ほどの大道芸人、150軒のファーマーズマーケット、170軒のクラフト(手作り民芸、装飾品、写真、絵画等)、300店舗のレストラン、肉屋・魚屋といった店がひしめきあう。食に関するものなら、野菜、魚、肉、花、パン、ワイン、スパイス、紅茶、コーヒー、ドライフルーツ、そして食器類などのキッチン用品まで何でもありとか。
話しは変わって、フランシズ・メイズ(サンフランシシコ大学教授、かつ詩人)の『トスカーナの休日』というエッセイがあります(早川書房、ISBN4-15-208564-9)。トスカーナにある広大な土地に立つ古い屋敷を買った著者は、パートナーのエドとともに荒れはてた屋敷を修復し(空前絶後の難行!)、野菜やハーブを育て、果樹を植え、その自家製素材を使った料理をつくるといった、バイタリティあふれる実話です。映画化されてもいるようです。映画では、都会生活の疲労と失恋のため失意の主人公が、トスカーナの人と自然と新たな愛によって、元気を取り戻すという物語を描いているようですが(ネットでの紹介、私は見ていない)、原作はおばさんパワー全開の本。この本を読んでいると田舎暮らしをしたくなるから不思議。
 家の修復とならんで、多く語られるのは食べ物のこと。市場での買い物、八百屋のおかみさんとのやりとり、さまざまな地元の素材を生かしたレシピ。
 たとえば、ある日、著者が市で買ったものは、子豚の丸焼き、エスパドリーユ(麻で編んだサンダル)、鋳鉄職人が作ったインテリア(生ハムのホールダー)、柳の小枝で編んだバスケット、地元の婦人たちが編んだレースやリボンをふんだんにあしらった枕カバー、アーティチョーク、ファジョリーニ(さやいんげん)、白桃、さくらんぼう、ぶどう、泥のついた小さな黄色いじゃがいも、地元産ワイン、庭先で咲いたピンクの百日草。このように食料品、植物、衣類、インテリア、家庭用品までさまざまなものを売っている。地元の人びとが市にくるのは、買い物だけでなく、友達に会ったり、仕事の話しをまとめたりするためもあるとか。だからバールがあってコーヒーも提供される。
 ところで、市に並んでいるものは、その日の朝が収穫のグッドタイミングのもの。市で買ったその日に食べるのが食べ時なので、イタリアでは、アメリカのような巨大な冷蔵庫をもつ家庭は少なく、小さな冷蔵庫なのだそうだ。
 

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