<<< 2007.06 >>>
☆★☆ 農業集落カードの魅力D ☆★☆
統計利用についてのTipsやお奨めの統計データをご紹介するコーナーです。
統計利用についてのTipsやお奨めの統計データをご紹介するコーナーです。
今回は、2000年世界農林業センサス・農業集落カードの活用として集落の類型化を行う上で重要になる農業集落調査の指標と類型区分(類型区分については2007年1月号の「農業集落カードの魅力@」で簡単に紹介しました)が、さらに掘り下げてみます。
(1)基本指標
基本指標には、都道府県、市区町村、旧市区町村、農業集落の地域コード以外に4つの指標があります。なかでも「農業地域類型」は、(2)類型区分にも使用されている大変ポピュラーでかつ重要な指標です。よく農業施策の中で「中山間地域」という用語を耳にすることがあると思いますが、これは農業地域類型の中間農業地域と山間農業地域を合わせた地域を示しています。
1)農業地域類型
農業地域類型は、地域の農業構造を規定する基盤的条件の等質性に基づいた区分で、比較的安定している土地利用指標を中心とした基準指標で分類しています。
現在の「農業地域類型区分」は、1990年世界農林業センサス時から使用されているものです。もちろんそれ以前にも、1960年センサスの農業経済地帯区分などもあったのですが、これらは農業内部の立地条件を中心とする経営立地区分が中心でした。その後農業基本法が成立して以降、地域農業構造の変化が進み実態に合わなくなったため、1990年センサスから現在の区分に変わりました。類型区分は4つで、定義を整理すると以下のようになります(ただし条件の決定順位は都市的地域→山間農業地域→平地農業地域・中間農業地域)。
@都市的地域
・可住地に占めるDID面積が5%以上で、人口密度500人以上またはDID人口2万人以上の市町村(旧市区町村)
・可住地に占める宅地等率が60%以上で、人口密度500人以上の市町村。ただし、林野率80%以上のものは除く。
A平地農業地域
・耕地率20%以上かつ林野率50%未満の市町村。ただし、傾斜20分の1以上の田と傾斜8度以上の畑の合計面積の割合が90%以上のものを除く。
・耕地率20%以上かつ林野率50%以上で、傾斜20分の1以上の田と傾斜8度以上の畑の合計面積の割合が10%未満の市町村。
B中間農業地域
・耕地率が20%未満で、「都市的地域」及び「山間農業地域」以外の市町村。
・耕地率が20%以上で、「都市的地域」及び「平地農業地域」以外の市町村。
C山間農業地域
・林野率80%以上かつ耕地率10%未満の市町村
注)DID(人口集中地区)とは、人口密度4,000人/km以上の国勢調査基本単位区がいくつか隣接し、合わせて5,000人以上を有する地区。「傾斜」は、1
筆ごとの耕作面の傾斜ではなく、団地としての地形上の主傾斜になります。また旧市区町村とは、昭和25年(1950年)2月1日現在の市町村の区域を指します。
ところで、農業集落カードの農業集落調査結果の項目で、「都市的地域は除く」という項目があるのをご存じでしょうか。2000年農業集落カードでは「地域・環境資源の保全」、「地域の諸組織」、「交流事業」といった項目です。単純に考えれば都市的地域の農業集落ではこの項目は空欄になるはずです。ところが、農業集落によっては、都市的地域以外なのに該当欄に数字が表示されていない場合があります。これはデータの誤りではなくて、調査時点の農業地域類型と最新の農業地域類型が異なる(変化した)場合に起こります。2000年の農業集落カードを例にみてみましょう。2000年センサスの調査時点は2000年2月1日ですが、調査時点の農業地域類型は前回センサス調査年の公表時(1995年9月時点)の農業地域類型を用いています。また結果のとりまとめに使用する農業地域類型は2000年9月時点のものになります。つまり調査時点の農業地域類型が都市的地域の場合は、項目自体が調査されませんので、結果とりまとめ時点の農業地域類型が都市的地域以外になっても項目は空欄になるというわけです。もちろんこの逆もあります。調査時点では都市的地域以外で項目が調査されていても結果とりまとめ時点の農業地域類型が都市的地域ならば項目は空欄になります(これら以外にも農業集落区分が農家点在地の場合、農業集落調査結果が掲載されない場合があります)。
2)その他基本指標
農業地域類型区分以外にも「95との関連」、「継続の確認」、「農業集落区分」があります。「95との関連」は、1995年センサスから2000年センサスのかけての農業集落の範囲の変化を示す指標です。主な区分としては「地域範囲と地域コードが一致している場合」と「範囲が変更されている場合」、「基本指標が変更されている場合」、「土地造成等で農業集落が新設された場合」の4区分です(詳細には分割、合併の状況で15種類の区分があります)。「継続の確認」は1970年から2000年までのセンサスで該当年に農業集落内に農家が存在したかどうかを表している指標です。この指標をみると農業集落カード内に、どの農業センサスデータが掲載されているかを確認することができます。また「農業集落区分」は2000年現在における農業集落の区分を表しています。区分は「一般農業集落」と「農家点在地」の2種類です。一般農業集落とは農業集落調査の実査を行った農業集落で、「農家点在地」とは市街化によって非農家の間に少数の農家が点々と存在しているだけになったり、著しい過疎化により農家数がわずかになってしまい、農業集落機能が失われたとみられる地域をいいます。農家点在地で注意が必要なのは、農家点在地は農業集落調査の対象としていないので、農業集落カードには農業集落調査の結果は掲載されていない(農家調査の結果のみ)ということです。
(2)類型区分
類型区分には、合わせて13種類の区分があります。農業集落カードの隅にある指標でコード番号で表示されているため、普段はあまり注目しないかもしれませんが、この類型区分だけでも相当な情報量を持っています。代表的なものを用途別に見てみると。たとえば基礎類型は自然条件を間接的に表す指標としてみることができます。また「農家率別」は長年、農業センサスで利用されている汎用的な類型で、地域(農業集落)の混住化の度合いを端的に示すものです。「人口動態別」は農業集落が所在する市町村総人口の動向と農業集落の農家人口の増減がどのような相関をもっているかを見ることができます。総人口の増減と農家人口の増減が比例しているという例は少ないとは思いますが、周辺動向の関連性をみる上で重要な指標の一つです。特に普及センターや広域の農協などで複数の市町村にまたがった地域分析をするときに大変役立ちます。また農業集落の社会経済的立地条件を見るには「社会経済立地別」や「都市計画区域・農業振興地域別」、「山村・過疎・特定農山村地域別」が有効です。農業集落と関係の深い中心都市(DID:人口集中地区のある旧市区町村)までの距離や法制上の指定地域を知ることができます。さらに生産構造も「販売農家率別」、「田の区画整理別」「農業集落主位作目別」、「65歳未満男子農業専従者率別」、「65歳未満農業専従者がいる農家率別」で類型化できます。この他にも農家人口の高齢化がわかる「65歳以上農家人口率別」や集落の活性化の1指標として「集落の管理機能状態別」といった区分もあります。各類型区分を構成している指標を整理すると下記のようになります。
(01)基礎類型
第1次区分:当該農業集落の所在する市町村の総人口(平成12年10月1日現在)(7階層区分)
5千人未満/5千〜1万人/1万〜3万人/3万〜5万人/5万〜10万人/10万〜30万人/30万人以上
第2次区分:当該農業集落の所在する農業地域類型(4区分)
都市的地域/平地農業地域/中間農業地域/山間農業地域
第3次区分:当該農業集落の総耕地面積に対する水田の割合(3区分)
水田集落(田面積率70%以上)/田畑集落(田面積率30〜70%)/畑地集落(田面積率30%未満)
(02)農家率別
第1次区分:当該農業集落における総戸数に対する農家数の割合(6階層区分)
10%未満/10〜30%/30〜50%/50〜70%/70〜90%/90%以上
第2次区分:当該農業集落における総戸数(6階層区分)
9戸以下/10〜24戸/25〜49戸/50〜99戸/100〜149戸/150戸以上
(03)販売農家率別
第1次区分:当該農業集落における総農家数に対する販売農家の割合(6階層区分)
10%未満/10〜30%/30〜50%/50〜70%/70〜90%/90%以上
第2次区分:当該農業集落における総戸数(6階層区分)
9戸以下/10〜24戸/25〜49戸/50〜99戸/100〜149戸/150戸以上
(04)人口動態別
第1次区分:当該農業集落の所在する市区町村人口の1995年から2000年にかけての増減率(10階層区分)
30%以上の増/20〜30%の増/10〜20%の増/10%未満の増/増減なし/10%未満の減/10〜20%の減/20〜30%の減/30%以上の減/平成7年市区町村人口がなし
第2次区分:当該農業集落における農家人口の1995年から2000年にかけての増減率(8階層区分)
増加/増減なし/減少10%未満/減少10〜25%/減少25〜50%/減少50%以上/平成7年農家人口がなし/農業集落の新設等
(05)田の区画整理別
第1次区分:当該農業集落の田の耕地面積(8階層区分)
10ha未満/10〜20ha/20〜30ha/30〜50ha/50〜100ha/100〜200ha/200ha以上
第2次区分:当該農業集落の田の耕地面積に対する区画整理されている面積の割合(5階層区分)
30%未満/30〜50%/50〜70%/70%以上/区画整理なし
(06)農業集落主位作目別
第1次区分:当該農業集落における販売農家のうち、販売金額第1位部門の割合が最も高い作目(11区分)
稲作/麦類作/雑穀・いも類・豆類/工芸農作物/施設野菜/露地野菜/果樹類/花き・花木/その他の作物/畜産(養蚕を含む。)/販売農家なし
(07)65歳未満男子農業専従者率別
第1次区分:当該農業集落の農業従事者に対する65歳未満の男子農業専従者の割合(8区分)
10%未満/10〜20%/20〜30%/30〜40%/40〜50%/50%以上/65歳未満の男子農業専従者なし/農業専従者なし
(08)65歳未満農業専従者がいる農家率別
第1次区分:当該農業集落の総農家数に対する65歳未満の農業専従者がいる農家数の割合(8区分)
10%未満/10〜20%/20〜30%/30〜40%/40〜50%/50%以上/65歳未満の農業専従者がいる農家なし/農業専従者がいる農家なし
(09)社会経済的立地別
第1次区分:当該農業集落の所在する市区町村の総人口(6階層区分)
5千人未満/5千〜1万人/1万〜3万人/3万〜5万人/5万〜10万人/10万人以上
第2次区分:当該農業集落のDID旧市区町村までの所要時間(4階層区分)
30分未満/30分〜1時間/1時間〜1時間半/1時間半以上
(10)都市計画区域・農業振興地域別
第1次区分:当該農業集落の都市計画区域と農業振興地域の指定状況(16区分)
市街化区域及び市街化調整区域・農業振興地域・農用地区域
市街化区域及び市街化調整区域・農業振興地域・農用地区域外
市街化区域及び市街化調整区域・農業振興地域外・農用地区域
市街化区域及び市街化調整区域・農業振興地域外・農用地区域外
市街化調整区域・農業振興地域・農用地区域
市街化調整区域・農業振興地域・農用地区域外
市街化調整区域・農業振興地域外・農用地区域
市街化調整区域・農業振興地域外・農用地区域外
市街化区域及び市街化調整区域以外の都市計画区域・農業振興地域・農用地区域
市街化区域及び市街化調整区域以外の都市計画区域・農業振興地域・農用地区域外
市街化区域及び市街化調整区域以外の都市計画区域・農業振興地域外・農用地区域
市街化区域及び市街化調整区域以外の都市計画区域・農業振興地域外・農用地区域外
都市計画区域外・農業振興地域・農用地区域
都市計画区域外・農業振興地域・農用地区域外
都市計画区域外・農業振興地域外・農用地区域
都市計画区域外・農業振興地域外・農用地区域外
第2次区分:当該農業集落の総農家数(6階層区分)
(11)山村・過疎・特定農山村地域別
第1次区分:当該農業集落の振興山村地域、過疎地域及び特定農山村地域の指定状況(8区分)
振興山村地域のみ/過疎地域のみ/特定農山村地域のみ/振興山村地域と過疎地域の重複/振興山村地域と特定農山村地域の重複/過疎地域と特定農山村地域の重複/振興山村地域と過疎地域と特定農山村地域の重複/上記指定なし
第2次区分:当該農業集落の1995年から2000年にかけての農家数増減率(8階層区分)
増加/増減なし/減少10%未満/減少10〜20%/減少20〜30%/減少30〜50%、減少50%以上/平成7年農家がなし
第3次区分:当該農業集落の65歳以上農家人口の総農家人口に対する割合(5階層区分)
65歳以上の農家人口割合5%未満/5〜10%/10〜20%/20〜30%/30%以上
第4次区分:当該農業集落の振興山村地域、過疎地域、特定農山村地域、離島振興対策実施地域、半島振興地域対策実施地域のいずれかの指定の有無(2区分)
(12)集落の管理機能状態別
第1次区分:当該農業集落の寄り合いの回数(5階層区分)
1〜3回/4〜7回/8〜14回/15回以上/0回
第2次区分:当該農業集落における農道の管理方法(5区分)
集落として管理・共同作業・全戸に出役義務/集落として管理・共同作業・農家のみ出役義務/集落として管理・人を雇って行う/集落として管理していない/農道がない
(13)65歳以上農家人口率別
第1次区分:当該農業集落の農家人口に対する65歳以上農家人口の割合(10階層区分)
10%未満/10〜20%/20〜30%/30〜40%/40〜50%/50〜60%/60〜70%/70〜80%/80〜90%/90%以上
次回は農業集落カードの活用についてご紹介する予定(「農業集落カードの魅力」の最終回)です。
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