とうけいチップス



<<<   2007.03   >>>


☆★☆ 農業集落カードの魅力A ☆★☆

 統計利用についてのTipsやお奨めの統計データをご紹介するコーナーです。
 統計ってどうしてこんなに難しい用語がいっぱいならんでいるんだろうって、自分でもいやになるくらいなのですが、これは調査内容の大きさや構造の深さによっているところが大きいので、仕方が無いところもあるのですが。。。まあくじけずにいってみましょう。

 今回は農業集落カードに掲載されている農業センサスの農家数の指標をみていきたいと思います。農業集落カードに限ったことではなく、農家調査一覧表等についてもいえることですが、農家数に関する情報というのは多岐にわたります。なぜセンサスでは「農家数」に関する統計データが、そんなにも多くあるのでしょうか?、という点に今回は注目していきます。
 実は農業センサスの情報表現は、大きく「変量統計」と「属性統計」の2つに分類されます。失礼しました、変量と属性というのは難しいですね。簡単に言い換えますと「量をはかる統計」と「分類して数をかぞえる統計」になります。「量をはかる統計」とは耕地面積や家畜飼養頭羽数のように連続した数字の形で表現される統計のことです。「分類して数をかぞえる統計」とは農家分類別統計(たとえば経営耕地面積規模別農業経営組織別農家数)のように、分類して各分類別の件数や戸数を数える形式で表現される統計(複数の変量統計の階層をクロスした統計)のことです。
 「量をはかる統計」の表示方式は、さらに「総数(合計)」と「量の階層別件数」の二つがあります。総数(合計)は例えば総経営耕地面積や販売目的のために作付(栽培)した面積があげられますし、量の階層別件数では代表的なものとして、経営耕地面積規模別農家数、専兼業別農家数などがあります。
 統計とくに農業センサスで面白いのは、農家数という総量の把握だけでなく、その構造や性格など多方面から接近できるところではないでしょうか。たとえば、以下のような地域の統計があったとします。

例)A地域
@総農家数    100戸
A総経営耕地面積 200ha
B経営耕地面積規模別農家数
 0.5ha 未満  50戸
 0.5〜1.0ha  20戸
 1.0〜2.0ha  10戸
 2.0〜3.0ha  10戸
 3.0ha 以上  10戸

 われわれは統計を利用する際よく平均値を利用します。平均値を求めるというのは、ざくっとデータの概況をつかむための便利な手法ですが、その裏に隠れているものを確認しておかないと、痛い目にあったりします。上の例でたとえば、A地域の概要をみるときに平均経営耕地面積(農家1戸当たりの平均経営耕地面積:A÷@)を求めるとします。結果は1農家当たり2haになりますが、A地域は2ha台の大規模農家が多数存在すると言ってしまってよいでしょうか。それを構造的に確認するための数字がBの数字です。Bの数字をみると2ha以上の農家数は20戸で全体の2割に過ぎないことがわかります。一概にには言えない部分もありますが、むしろA地域の概要は、2ha以上の大規模農家が2割存在するものの、過半数の農家が1.0ha未満で零細である、とみるべきでしょう。このように総数だけでは、階層の偏りを見落としてしまいがちですので、「量をはかる統計」では「総数(合計)」と「量の階層別件数」で立体的に把握する必要があります。
 さてもう一方の「分類して数をかぞえる統計」は、農家分類統計といいましたが、農家を分類するのは何のためでしょう。「量をはかる統計」の「量の階層別件数」で十分のような気もするのですが。過分に政策的な部分もありますが、農家を分類する主な目的は、「分類(グループ)別に農業資源の配分が適正に行われているかどうかを確認する」と言ってしまってもよいでしょう。たとえば、経営耕地面積規模別農業経営組織別農家数というクロス統計をみることにより、地方公共団体や農業団体の地域ごとのシナリオとして対策や政策の対象としているグループ(例えば水稲大規模農家の育成であれば、単一経営・稲作の5ha以上というグループ)が全体のなかでどのうような状況になっているかを把握することが容易にできます。
 さて脱線ばかりでなかなか先にすすみませんが、次回は農家数指標を個別にみていきたいと思います。