統計利用についてのTipsやお奨めの統計データをご紹介するコーナーです。
前号からだんだん話が固くなってきたなあ、と反省しているのですが、これから先もまだまだ固い話が続きそうなので、ちょっと心配になってきました。それでもじわじわ効いてくるような内容を心がけていきたいと、今年は初詣で祈ってきました。神だのみかあ〜、と突っ込まれそうですが、本年もよろしくお願い申し上げます。
さて前号では農業集落カードの変遷について、書きましたが、今号は農業集落カードの中身を見ていきたいと思います。農業集落カードは、農林業センサスの農家調査結果と農業集落調査結果のデータを組み合わせて、集落という地域単位の概況を把握するためのデータで、より詳細な構造を把握するためには、農家調査一覧表等を組み合わせて利用します、ということを以前申し上げました。
では、農業集落カードではどんな概況が把握できるのでしょうか。農業集落カードの変遷によって、変化した部分もありますし、10年毎の農業集落調査のデータでしか把握できないものもありますが、主に以下の事項を把握することができます。
@農業集落の立地条件を見る
自然条件(標高・主な地勢等)
社会経済的立地条件(法制上の指定地域、最も近いDID市町村、集落の取組み)
A農業集落の規模を見る
集落の総戸数・非農家数、農家数
集落の土地面積(集落の面積規模、耕地面積(属地)等)
B農業集落の性格を見る
農家人口の変化(年齢階層別農家人口)
就業状態別世帯員数の状態(就業状態別、農業就業人口等)
C集落農家の動向を見る
経営耕地面積規模別農家数
専兼業別農家数*
(現在では集落農家の動向を見る場合は、専兼業別農家数より、農家所得に
占める農業所得の構成で分類される主副業別農家数の方が主に利用されています)
D農業集落の農業生産の状況を見る
経営耕地、貸付耕地、借入耕地、耕作放棄地
作物類別作付面積
農用機械台数の状況
生産組織の状況
農作業受委託の状況
E農業集落の運営・コミュニティーの状況を見る
寄り合いの開催回数、議題
地域の諸組織等
F分析指標、各種類型
農家数増減率、農家人口の年齢別構成比
類型区分
注:@、A、Eは農業集落調査結果(Aの農家数は農家調査結果)によります。
B、C、D、E、Fは農家調査結果によります。
ただしFの類型区分は農家調査結果、農業集落調査結果およびそれ以外の指標等から算出し類型化されたものも含んでいます。
※まず「類型区分」に注目!
どうでしょうか。単純に7カテゴリーですが、それぞれに含まれる指標数や年次数を考えると、かなり多い項目になりますよね。さて、そうすると、農業集落カードはどこから手をつけたらいいでしょうか。農家数の変化でしょうか、集落の規模でしょうか?
もし迷ったらまず最初に「類型区分」を見ることをおすすめします。
類型区分は農業集落に関連する指標(農業集落カードに掲載されている指標以外の指標も使われています)を組み合わせて、農業集落の概況を把握するための区分です。
類型区分は、2000年版の農業集落カードではD票(4枚の農業集落カードの最後の票)の最下段にあります。全部で13の区分があり、この区分を利用するだけでも、区分別の集落数をカウントして、一定範囲の地域下の集落の分類を行うことができます。
・基礎類型
・農家率別
・販売農家率別
・人口動態別
・田の区画整理別
・農業集落主位作目別
・65歳未満男子農業専従者率別
・65歳未満農業専従者がいる農家率別
・社会経済的立地別
・都市計画区域・農業振興地域別
・山村・過疎・特定農山村地域別
・集落の管理機能状態別
・65歳以上農家人口率別
例えば『基礎類型』という類型区分は、「対象となる農業集落の所在する市町村の総人口区分(第1次区分)」、「対象となる農業集落の所在する旧市区町村の地域類型(農業地域類型)区分(第2次区分)」、「対象となる農業集落の総耕地面積に対する田面積の割合の区分(第3次区分)」の各々の区分を数字のコードに置き換えて、結合したものを区分コードとして掲載しています。
農業集落の性格を、市町村の総人口の動きに対応させて分類しているのは、広域の地域を扱う農協や振興センターといった視点での分析に有効という意味あいもあります。
基礎類型のコードの見方は、たとえば「513」とあった場合、これは数字の「ごひゃくじゅうさん」という意味ではなく、数字の左側から「5」、「1」、「3」と3つに区切って第1次区分の1、第2次区分の1、第3次区分の3と見ます(ですから「ごういちさん」と読むのが正しいかもしれません)。その意味は『「対象となる農業集落の所在する市町村の総人口が5万〜10万人」で「この集落の農業地域類型は都市的地域」、しかも「農業集落の総耕地面積に対する田の割合は30%未満の畑地集落」に分類されます』といった具合です(次回、類型区分の定義詳細を掲載します)。
おそらく類型区分が難しいと思われる点は、一般的な統計にあるような実数値ではなく、これらの区分をあらわすための数字コードという点ではないでしょうか。よく利用ガイドでコードのリストを挙げたりしていますが、それを眺めてもあまり理解できないのではないかと思います。でも理屈さえわかってしまえば、それほど難しいことはありません。実数値で自分でもっと細かい区分がしたいという方には不向きかもしれませんが、レディーメイドの区分としては相当細かい情報となっています。それに実数値は抽出できませんが、区分を分解して市町村の総人口の区分だけ抽出して利用することもできますし、数値区分であれば中間値を乗じて推計値を導き出すこともできますので、利用できる奥行きは結構あります。
基礎類型の他にも重要な類型が幾つかあります。たとえば農家率別や販売農家率別の類型を利用すれば、混住化の状況や地域における農家数の限界集落を簡単に抽出できます。また一般的な地域構造指標として用いられる人口指標でも、基礎類型と同様に農業集落の所在する市町村の総人口増減と農業集落における農家人口の増減を組み合わせた人口動態別類型、圃場整備の充実度として田の区画整理率別類型や農業集落の主位作目別類型(農業集落における販売農家のうち、農産物販売金額第1位部門の割合が最も高い作目)、農業生産を担う65歳未満農業専従者の指標を使った、65歳未満男子農業専従者率別類型やそれを農家世帯でみた65歳未満農業専従者がいる農家率別類型、所在する市町村の総人口と農業集落の中心地からDID(人口集中地区)旧市町村までの所要時間とを組み合わせた社会経済的立地別類型、法制上指定地域の類型を組み合わせた都市計画区域・農業振興地域別、山村・過疎・特定農山村地域別類型の他に農業集落の農家人口の高齢化の度合いを表す65歳以上農家人口率別(10%刻みで階層化されています)。
さて次回は、農業集落カードの農家数の指標をみていきたいと思います。農業集落カードに限ったことではなく、農家調査一覧表等についてもいえることですが、農家数に関する情報というのは多岐にわたります。なぜセンサスでは「農家数」に関する統計データが、そんなにも多くあるのでしょうか?、という点に注目していきたいと思います。