今回は、八木宏典著『新時代農業への視線』です。国民の農業への期待が変わってきていることに対して、農業経営はどう対応していったらいいのかを、さまざまな局面からみたものです。そうした期待とは、本来の食料の安定的な供給だけではなく、それ以上に「美しい田園風景」や「生きものを育てる」といった農的なものへのあこがれからきているようにみえますね。農業の多面的機能への期待が今後さらに大きくなるということでしょうね。確かに
、この本のなかに書かれているように、テレビでも田舎や農業を扱った番組が増えていますね。
この本にも取り上げられている「ザ!鉄腕ダッシュ!!」。あのダッシュ村でTOKIOに農業指導する三瓶明雄さんは何でも知っていて感心しちゃいます。稲、野菜、果樹づくりから食品加工はもちろんのこと、井戸の作り方も知っている。昔の農家の人はあのように何でも知っていて、しかも何でも作れたんでしょうね。こうした人材を大事にしていくことも農業の多面的機能をバックアップすることになると思うけどなー。
ところで、この本のなかで「パートナーシップと家族経営協定」について述べた章があります。アメリカのパートナーシップの紹介と日本の家族農業協定の現状をとってもやさしく説明しています。八木先生はパートナーという語をダンスのパートナーから説明していて、映画の「Shall We ダンス?」を例にしているんだよ。
映画のなかのダンススクールの先生(草刈民代さんが演じている)がイギリスのブラックプールで開かれるソーシャルダンスの世界選手権の晴れの舞台で転倒し男性のパートナー不信に陥っているという(なぜなら草刈さんが演じる先生が転倒したときかばってくれなかった。これはパートナーが自分のことを尊敬してくれないからだ。そんなパートナーとは一緒にやれないという)のが、生徒さんとの交流のなかで本当のパートナーシップのあり方を学んだということに八木先生は注目しているんだよね。パートナーシップとはお互いに対等の立場で力を出し合い協力していく、家族経営の場合も、お互いが対等の立場で共同経営を行っていくことが必要なんだって。
そこで思い出したのが、トリノオリンピックのフィギア・ペアの中国の張丹&張昊組。フィギア好きなので、トリノ以前から中国の雑技のような大技連続の張丹&張昊組の演技には驚きでみていたのですが、トリノの場面は感動的でした。
このままいけば金メダル確実と思われたフリー演技での着氷失敗。張丹さん(女性の方)は起き上がるのもやっと。ペアの張昊さん(男性の方)が心配そうにそばに寄ってくる。音楽がストップし、このまま競技が中断されるかと思っていたら、彼らは最後まで続けるという。後の演技中ずっと彼女をいたわる張昊さんの優しさがテレビを通じて伝わってきました(草刈先生のパートナーとは全然違う!)。そしてノーミスの演技。観客は全員スタンディングオベーション。結果は銀メダル。
中国のネットに2人のインタビュー(中国オリンピック委員会公式サイトより
)をみつけたよ。訳してみましょうね。
張丹「あのときリンクの上で特に痛いという感覚はなかったの。なぜって心も体も試合に集中していたから。確かに転んだ瞬間はすっごく痛かった。あのとき私の左腿はほとんど感覚がなかったの。自分を支えられず、すべての
体重を右足にかけて張昊につかまってやっと立ちあがったの。」
張昊「あのとき当然僕はテレビの前の観衆より心配していたよ。僕たちはパートナーだけでなく、僕は彼女の最も身近な存在だし。それにこれは何といっても4年に1回のオリンピックなんだよ。彼女が痛そうなのをみて、僕の感じではこの試合は諦めなくてはならないと思って、少しばかり残念だった。しかし思いがけず彼女はすっごく強いんだ。試合を続行するばかりでなく、すべての動きをあんなに完成させたのだ。」
張丹「あのとき、最初に思ったのは、私と張昊のオリンピックは終ってしまった、もう試合を続ける方法はない、4年に1回のチャンスはなくなってしまったということです。それからゆっくりコーナーに行ったとき自分の足は大丈夫だと思いました。そのとき私の頭にあったのは趙宏博(同じくフィギアのペアの男性、由雪とペア)がアキレス腱を切ってもずっと訓練を続け、オリンピックに出たばかりか、試合であのような素晴らしい演技をしたことです。この精神は私を励ましてくれ、とても良い模範となりました。あんなひどいケガでも続けることができるのだったら、私と張昊もこのチャンスを
無駄にはできない、滑り続けようと思ったのです。」
2人「あの日リンクで起こったことすべては、かえって私たちのテーマ曲『龍之伝人』(王力宏が歌っている曲で中国人ならほとんど知っているという)の精神を完全に体現できました。」
八木先生の「お互いに対等の立場で力を出し合い協力していく」というパートナーシップというよい見本ですね。